人民元の切り上げと通貨バスケット?


2005年7月21日中国人民銀行(中央銀行)は、午後7時(日本時間午後8時)から人民元を対ドルで2%切り上げUSD1$=8.11元(1元=約13.5円)としました。上下0.3%の範囲内で変動する「通貨バスケット制」を採用したことで、1997年末(アジア通貨危機)からこれまで継続されたUSD1$=8.27~8.28元での事実上の固定相場制が解消。

絶妙のタイミングでのこの決断は、米国との通商摩擦を緩和する効果を狙ったもの。21日の米国市場では、人民元切り上げに過剰反応を示し、株式・債券・為替でトリプル安を演じたが、22日には反動から買戻しも見られた。これまでの人民元をめぐる思惑を消化しつつあるものの、中国政府の為替政策にはまだまだ不透明感が漂う。中国の世界経済へ及ぼす影響力が今後一段と高まるのは必至で、かつて日本が直面した繊維製品や自動車、テレビ等の米国への輸出に伴う貿易不均衡を是正するため、円高局面に向ったことと重なるもの。今後は、人民元だけでなく、アジア通貨の調整が進むことが予想されます。

その反面、中国の商業銀行は、米国ドル外貨預金金利を0.5%引き上げを実施。 21日マレーシア通貨リンギもペッグ制(特定通貨連動制)から通貨バスケットに移行。香港では、USD1$=1.78香港ドル(上下0.64%)の目標相場圏制度を導入するもののペッグ制を維持。

日本の通貨政策の歴史はというと、1971年8月15日米国ドルと金の交換を停止したニクソンショックをきっかけに、その12月、22年間続いたUSD1$=360円とした固定相場制を308円に約17%切り上げ。さらに、1973年に変動相場制に移行。1985年プラザ合意で一段の切り上げがあり、現在の水準までになるものの、これまでにも通貨当局の市場介入が繰り返されてきました。

欧州では、通貨バスケットであるECU(欧州通貨単位)を採用した後、欧州単一通貨ユーロを導入、国際通貨としての役割を果たしています。

【通貨バスケット制度】 複数の通貨の為替動向に連動させた通貨政策。「かごに米国ドルやユーロ、円などを入れ」貿易決済に使用する比率などで基準値を計算。通貨の動きがそれぞれ相殺効果を生むため、基準値の動向は小幅になる。


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