Part29


今朝の日経朝刊で報じられた 「金融庁は、外国為替証拠金取引(FX)の証拠金倍率の上限を20-30倍前後に規制する方針を固めた」 に、あらためて監督官庁はFXという商品性を分かっていらっしゃるか? 疑問に思えてきました。
まず、「FXは投機的取引か?」 ・・・ もちろん “ノー” です。 FXはおもに個人投資家が参加するマーケットで、07年夏にTIMESONLINEの論説で “The kimono traders
(http://women.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/women/article2187250
.ece)が話題になり、また、何億円という為替差益の脱税摘発がセンセーショナルに報道されたことで、いかにも “投機に走るFXの個人投資家” と映るかもしれませんが、所詮はインターバンク市場に参加する金融機関とは桁違いに小さい金額で、かわいく売買を繰り返す個人投資家のマーケット。 「東京市場」や「ニューヨーク市場」といっても、それは便宜上そう呼称してるだけであって、実際には、外国為替取引は世界じゅうの金融機関や機関投資家(ヘッジファンド・保険会社・商社…)が24時間参加する市場規模であって、個人が “投機” という行為をできるはずありません。
さらに、超~簡単にFXを説明するならば、(A)資産運用先としてポートフォリオへの組み込みできる (B)スワップ金利を受け取る長期保有(外貨預金の代替) (C)為替ヘッジ(外貨資産や貿易決済の為替リスク低減) などの “合理性・経済性” を持つ金融商品でもあり、とくに銀行に相手にされず貸し渋りにあう中小企業にとっては、手数料も安く・スプレッドも狭いFXを重宝してるはずです。
たとえば、証拠金倍率100倍ならば(*)、1万円の手元資金で100万円のヘッジ取引・売買ができるものが、仮に上限20倍と制限したら、100万円のヘッジに5万円の資金を用立てる必要になり、個人や中小企業のコスト増につながってしまいます。
別の言い方をすれば、余裕資金10万円で1万ドルを運用する場合、100倍では(1万円分は証拠金)9円の円高まで堪えられるのに、20倍になれば(5万円分は証拠金)5円の円高で強制ロスカットになり、当該外貨運用を継続する場合には余計な資金の用立てを迫られることになってしまいます。
すでに一部のFX業者では、複数のレバレッジの選択肢を顧客に提供しており、すなわち、「法令上の上限規制が必要と判断」 は、FXの魅力を殺ぐものであって、FXに参加する投資家や為替ヘッジが必要な中小企業にとって何のメリットも思い浮かびません。
以前、「損をする年の税金は減らないのに、得した年だけ税金を納めるのは不公平」 ともっともな主張(?)をした脱税主婦は、もちろん 「納税意識の欠如」 との正論で裁判官に断罪されました。 「貯蓄から投資へ」 との国策の一方で、FXには店頭と取引所取引のあいだに不公正税制も存在し、この不公平感を一刻も解消するために、監督官庁は、証拠金倍率やスプレッドにスポットを当て、FXを「投資ではなく投機」と論じるよりも、まずは損失の繰越や他の金融商品取引と損益通算できるよう税制改革に手を付けた方が、よっぽど個人投資家に目を向けた良い行政になるのでは! 
今回の報道のように法令の改正が進むのであれば、自由な競争の阻害にもなり、また国内FX業者の衰退にもつながりかねません。 証拠金倍率やスプレッドなどは監督官庁を煩わせるほどのことでもなく、金融商品自体の仕組みであるFXの “証拠金倍率” が問題視されるのであれば、それは以前からBlogするように、FX業者が自主的に “Code of Conduct”(行動規範) を定めたり・検討する “いわゆる慣行委員会” のような自主団体にゆだね、対処させる方が望ましいと思えて仕方ありません。
(*) 1USD=JPY100と仮定。手数料やマージンカットレベル(自動ロスカット水準)・スワップ金利等は考慮せず。
// by Rumina
2009年4月24日


◇ ◆ ◇ ◆ ◇
―― 日経朝刊 「FX投機的取引に規制-金融庁方針」の要旨 ――
「金融庁は外国為替証拠金取引(FX)に、証拠金倍率を規制する方針を固めた――投機的取引を抑制するため、上限を20-30倍前後とする方向で調整する。
証券取引等監視委員会が24日、金融庁に制度改正を要請し、金融庁が金融商品取引法の関係政省令の改正作業に入る。早ければ今夏にも導入する見通し。
大幅な規制強化で、FX業者の経営を圧迫するのは必至で、業界内では再編・淘汰が加速しそうだ。株式市場の3倍に当たる年間7百兆円の売買があるため、個人投資家が反発する可能性がある――」(日経新聞/一部抜粋)


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