Part18


最近では、投資アドバイスや資産の管理・運用を包括的に手がける「ラップ口座」(証券会社)やプライベートバンキングとして不動産の運用・管理、相続や税金対策、保険などを個々の顧客に合った「資産」のコンサルティングを行なう富裕層向け金融サービスのニーズが高まっているようです ・・・


外国為替証拠金取引は、外貨取引(FX取引)としては小額で、コストに見合った収益が見込めないとしてリーテール参入には躊躇があった銀行に代わり、またニッチ(niche)でも巨大なマーケットに育つと判断した(狙った)会社(個人)が提供し始めた個人投資家を対象にした取引です。今年3月末には、証拠金残高は7000億円(00年は87億円)、取引口座数は60万件ともいわれるまでに市場は急拡大してきています。
外国為替証拠金取引の魅力は、(1)市場の取引時間に制限が無く、月曜日早朝から土曜日早朝まで毎日24時間フルに為替レートの値動きを狙って、(2)レバレッジを利かせた小額の資金を元手に、(3)パソコン操作で、(4)短期間に大きな利益を得ることも可能。しかも、(5)日毎加算されるスワップ金利も魅力的に映ることから ・・・ ウケけているようです。「外国為替」という金融商品は、もともと流動性が高く、フェアな取引であることを少しでもアピールするため、セミナーの開催も盛んです。また、ここにきて、一部の投資家による「巨額の脱税」 がニュース・報道されたことで、これまでの外国為替証拠金取引にまつわるグレーなイメージから「FXは儲かる」 と好意的に受けとめる個人投資家もチョッピリ現れ始めているようです。
顧客獲得のために、大手ならともかく、ここぞとばかりに「○○プレゼント」といったFX取引とは本来関係のない「ギフト・プレゼント」や「お得感」を前面に打ち出したキャンペーンが繰り広げられるこの先は 「どこへ?」 と心配にもなります。さらには「不評につき」余ったプレゼントを掃くために「延長」する攻勢は考えものです。
取引会社による口座開設数や証拠金の預託額も公表され始めていますが、先の数字で単純に計算した1口座あたりの証拠金は約115万円であり、これでは個人投資家はお小遣い程度の為替差益しか獲得できていないのではと推測されます。 顧客にとって取引に係るコストと収益のバランスを計る基準は、目に見えるコストの割安感 ・・・ 手数料無料・スワップ金利が高い・スプレッドは小さい ・・・ なのかもしれません。しかし、サービスの質の低下やシステムの保守がおざなりであったとしたら、得る利益よりもむしろ、取引にストレスを感じさせられる反動のほうが大きくなるかもしれません。
取引会社は、数千万円の証拠金を預け入れ、1ショット500万ドル以上のデイトレ(Day Trading)する顧客(個人・法人)を数口座取り込むことで、収益の基盤を築いています。個別に交わされるボリュームディスカウントやCAP制の導入による手数料体系の見直しで、顧客が負担すべきコストの均衡を図る営業戦略こそが、正統なサービス提供につながるのではないかと思えるのですが ・・・ 実は、もうすでに団塊世代の退職金の受け皿として外国為替証拠金取引が注目されることを期待する業者のなかに、富裕層向けに充実したVIPサービスの提供へシフトする動きも見られます。いずれにしても、取引会社がそれぞれの棲み分けをアピールする特色ある企画と事業展開が図られないようでは、業界集約のスキーム(「既定路線の再編」)に取り込まれて行く姿 / 兆ししか見えてきません。
// by Rumina
2007年5月18日


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