Part16


これまで、機関投資家(プロ)が舞台の主役だった外国為替市場に、「個人」が参入する外国為替証拠金取引の活況は、マーケットにおける影響力にも変化が現れているようです。98年の外為自由化に加え、24時間のネット取引がウケ、割安な手数料とタイトなスプレッド、低金利と「円キャリー取引」を要因に円安トレンドも手伝い、さらにはスワップ金利の魅力も注目されたことで、投資リスクを取れる個人投資家に浸透し始めた外国為替証拠金取引。 でも ・・・
インターバンク市場では、主要な経済指標前には ” 市場からプライスが消え “、発表された直後には、直前まで取引されていたプライスとは大幅に乖離した、しかもスプレッドは50~100ポイント・ワイドなレートが、突如として提示されることもしばしばあります。
そこで、米国の主要指標発表前のインターバンク市場の≪ボイス・ボックス≫にスイッチを入れてみると ・・・


東京21:25 118円80-85銭であったドル円のプライスが、
「 プライス消えます 」
とマイクに向かって告げる外為ブローカーの声とともに、市場には数分間の静寂のときが流れ ・・・
東京21:30 ロイターのディスプレイに点滅した指標発表の数字と同時に、
「 ちょうど-ちょうど 」
・・・ 再び聞こえ始めた外為ブローカーのプライス・クォート(Quote) ・・・ 取引の再開です。
『 大台はー !?』
銀行ディーラーの怒鳴り声が響きわたり、
「 7ちょうど-8ちょうど (117.00-118.00)です 」 (もちろんこれ、BidとOffer)
外為ブローカーが答えると、
『 ごまる (117円50銭) 買いー 』
外為ブローカーの前におかれた銀行のディーリングルームと専用回線で引かれたボイスボックスから絶叫が !
すかさず 「 ゆぉ~ず (yours=それ売るヨ ! ) 」 と銀行ディーラーの注文に呼応した担当外為ブローカーが叫ぶ。 すると一斉に、
『 ごまる売り~ィ ! 』
と悲鳴にも似た注文が、各銀行スピーカーからこだまして、売り一色に様変わり。
118円20銭のストップロス注文を機関投資家から受けていた銀行は、次のベストBIDの117円00銭を叩いて約定。
・・・ (これがインターバンク市場版の ” スリッページ “)
買い注文(買い指値)はことごとく叩かれ、DO~NE (約定) !
・・・ 東京 21:50 ・・・
116円30銭アラウンド(around)で落ち着きを見せていると、 突如、
『 まぁ~いん! (mine=それ買うヨ ! ) 』
と甲高い声で、” 売りにも疲れたか ” と見た銀行ディーラーが買いを仕掛け、追随する2~3行から買い注文が出始めた瞬間には、一転して買い相場の展開。
・・・ きゅうまる-にまる (116.90-117.20) までドル買いが進んだところで、
『 にまる、まぁ~いん (117円20銭を買いたい) 』
と、銀行ディーラーは ヒット (hit=注文) したものの、
「 済みませ~ん、入ってませ~ん ! 」
他の銀行に先を越されて買えなかった外為ブローカーの悲痛な声に、
『 次はー !? 』
「 ごまる売りー (117円50銭の売り) 」
『 まぁ~いん ! 』
・・・ (これもスリッページといえるかも・ネ)
東京 22:25 いつの間にか指標発表前の118円80銭アラウンドに戻っていて、市場はこう着状態に ・・・
東京 22:50 銀行ディーラーと外為ブローカーの「 お疲れさまでした 」というマイクとスピーカーを介した挨拶で、この夜の ” 指標の宴 ” は、お開きとなります。
こんな ” 宴 ” のさなかに、外国為替証拠金取引では、取引会社は通常通りの一定スプレッドで顧客にプライス提示すること自体が不自然 (不思議) なことであり、取引会社も個人トレーダーも取引リスクが高くなるのはアタリマエのこと。 取引会社は顧客が抱く「 不満リスク 」 をあえて助長させながら業務しているようなものですよネ !?
エピローグ
ほとんどの外為ブローカーは帰宅の途につき、業務は終了したかに思えるブローキングルームでは、若いスタッフはコンファメーション・スリップの突合せで居残り、さらに一部のブローカーはポジションが合わなかったり、ネームスイッチの事務処理に負われて、気づけば東京26時 ・・・ そして銀行のディーリングルームからは、何千万という大金を稼いだディーラーが意気揚々と六本木の街に消えて行き、負けたディーラーは顔を青くしながらも 「 明日がある 」 とストップロス注文と、まったく余計な新たなポジションメイクのリーブ・オーダー(新規指値注文) をNYK支店に残して帰宅。
・・・ まったくFX取引って ” 体力勝負 ” による資産の運用ですよ・ネ ! 
// fin
(注: このフィクションの文中では、アマウント(注文数)は割愛しました)
2007年3月14日
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by R


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