身近であるはずのFX?


外国為替 (FX) は、各国の金融政策や実態経済、さらには地政学リスクなどの要因が反映され、投資マネーがどこに向うかによって市場レートは決定します。 株価は、企業業績を反映するもので、さらに決算は為替レートによっても大きく変わります。一般消費者の財布の中身は、ガソリン価格や輸入品価格など国内物 価に影響され、クレジットカードで支払う海外旅行先のホテル料金も為替レートが大きく関わってきます。そんな身近であるはずのFXが、外国為替証拠金取引 と名が変わると “ 難しく感じる ” のはどうしてか? ≪為替の謎-19≫で紐解きます。


小額の資金で何倍もの外貨取引を行う外国為替証拠金取引。もちろん「余裕資金」を預託して取引することが前提のハイリスク・ハイリターン商品です。そして外国為替証拠金取引を説明するとき、テーマのひとつになるのが 「レバレッジ」。 このレバレッジ効果を「リスク」として大きく語られることに違和感を覚えます。

仮に、1ドル100円の為替レートで10,000ドルの「ドル買い/円売り」の直物取引(SPOT取引)をすると、2営業日後の受渡し日に100万円の キャッシュを用意しなければなりません。レバレッジ1倍の外貨預金がこの取引にあたります。外国為替証拠金取引は、レバレッジが10倍であれば10万円、 レバレッジが200倍であれば5,000円の証拠金を預託することで10,000ドルの取引ができる金融商品です。

「証拠金」の定義は、各社まちまちであることから、あらかじめ確認しておくことが必要です。仮に、10,000ドルのポジションメイク(新規取引)で必要 となる定額証拠金(維持証拠金)が5,000円ならば、10万円の初回預け入れで、9円40銭(取引手数料等を差し引いた可能証拠金相当)のレンジで為替 差損をカバーできることになります。

さらに、外国為替証拠金取引は「マージンカット」という自動清算システムを採用しているため、「追証」という概念はありません。すなわち、為替差損をカ バーする可能証拠金がゼロになると、保有しているポジションは自動的に反対売買(決済)されることで、預け入れた資金以上の損失が発生しない取引でもあり ます。

また、ストップロス注文を設定しておくことで、許容できる最大の為替損失で決済することができます。レバレッジが高いほど、ストップロス注文で設定する レートの範囲は広がり、損切りする自由度を手にすることになります。各自に見合ったリスク許容額が反映できる高レバレッジを「ハイリスク」とする説明は“ 逆 ” です。最小限の証拠金で、最大限に外貨を効率的運用する外国為替証拠金取引は、ストップロス注文の設定とマージンカット機能の併用で、24時間為替差益を 獲得のチャンスにつながる、もっともフェアでわかりやすい金融商品であると思うのですが!?

外国為替証拠金取引する前には、無料で仮想FX取引を体験できるデモ口座を利用して、為替差益を得ようと夢中になるばかりではなく、ストップロス注文の設 定手順やマージンカットも体験しておくことが大切です。外貨取引による資産運用では、レバレッジ1倍の外貨預金も、オンライン取引するレバレッジが200 倍の外国為替証拠金取引も、同じ為替リスクが存在することを認識したうえで、自分に合った商品の選択をすることが大切ですね。


(*1)
維持証拠金は、保有ポジションを決済すると同時に戻されます。可能証拠金は、為替差損益やスワップ金利の円価での加減計算を反映し、常に変動します。

(*2)
取引コストには、取引手数料/スプレッド/スワップ金利があります。上記の説明では、取引手数料は往復500円、スプレッドを5銭で計算。スワップ金利 は、米国東部時間午後5時以降に決済を繰り延べ(ロールオーバー)したときに発生する「借入と貸出金利の差額を交換する金利」。

(*3)
非連続性の月曜日オープニングレートでマージンカットされた清算では、預託されている証拠金以上の損失発生で、新たな資金の入金が求められることがあります。

(*4)
ストップロス注文が執行される定義は、設定したレートが出合った場合に、次のベストレートで約定されるというものです。したがって、必ずしも設定した注文 レートで約定するものではありません。また、月曜日のオープニングレートでは、大幅に乖離したレートでストップロス注文が約定する場合もあることから、初 心者は週末を挟んでポジションを保有することは避けることが望まれます。


為替レートの変動


難しく感じてしまう外国為替も、ちょっと素材を代えると”身近”に思える取引になります。外国為替証拠金取引は、「レバレッジ」というツールで証拠金が損 失をカバーし、また「ストップロス注文の設定」や「マージンカット」によって、損失を限定することができるもの。ここでもう一度、為替レートがどうして変 動するのか確認しておきましょうネ!

 


◆ 取引レート(市場価格)はどう決定するのか?

「夕張メロンの初競りで、2個80万円で競り落とされた」と ちょっと前のニュース番組で紹介されました。話題性はともかくとして、一般消費者が買おうとは思わない値段です。

もっと身近に、「卵が1つ100円!」なんていうと消費者は購入を躊躇してしまい買い控えてしまいます。逆に10円だと消費者にとってはうれしいことです が、養鶏業者は赤字になってまで出荷したくありませんよね。そこで両者の「需要と供給」接点を探りながら価格は決定します。

さて、外国為替取引も同じように、「1ドルを両替するのに113円で売りたい」という銀行に対して「1ドル112円で買いたい」という銀行に加えて、 「112円80銭なら売ってもいいよ」という輸出企業や、「じゃあ、112円60銭なら買おうか」 というファンドなどが銀行を介して現われ、指値注文の「買値と売値」は徐々に接近することで「112円70銭‐75銭」という市場取引レートが出来上がり ます。

                112.80 (5)  【OFFER】
                112.77 (2)
                112.75 (10)
     【BID】 (3) 112.70
         (5) 112.65
         (5) 112.63
         (10) 112.60         *単位は100万ドル:(3)は300万ドル

インターバンク市場では、外国為替仲介業者に多くの金融機関の “指値注文” が寄せ集まり、「そのレート(値段)だったら買いたい/売りたい」 という成行注文で取引は約定していき、“現在の為替レート” として公表されます。 「112円70銭で300万ドル買いたい指値注文」 に対して 「70銭で1000万ドル売りたい」と成行注文すると、「次のベストの買いレート」 と「売れ残ったレート」が組み合わされて、市場価格は 「112円65銭‐70銭」となります。 このように継続的に繰り返される 「指値注文 (マーケット・プライス)」と成行注文の出会いによって、外国為替市場の「取引レート」は変動することになります。


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