取引レートとコスト?


秋の夜長を楽しむには、もってこいの明日からの3連休。天気予報によると、残念ながら全国的に雨模様の初日のようですが、ご自宅で過ごされる方のために 「外国為替証拠金取引」と「インターバンク市場取引」の比較解説をご用意しました。

外国為替証拠金取引は、次の(A)を目的に参加する投資家が主であると思われることから、ここでは投資家をあえて「トレーダー」と呼ぶことにします。さて、あなたの取引目的は。。。

A. スペキュレイティブで短期による為替差益の獲得を目的
B. 外貨預金の代替としてスワップ金利を受け取る長期保有目的
C. 外貨資産のヘッジ目的

【 外国為替証拠金取引のコスト 】
「外国為替証拠金取引」とは、トレーダーが、一定の証拠金(維持証拠金及び可能証拠金)を預託(担保)して、取引会社との間で、一定の取引単位で外国為替取引を行う金融商品です。

取引会社が提供する外国為替証拠金取引では、維持証拠金(例えば1万ドルの取引につき5,000円、通常は決済時に返還されます)およびトレーダーの資金に応じた可能証拠金(為替変動リスクをカバーする証拠金)を取引会社に預託することにより、1万通貨単位で外国通貨の売買取引を行うことができます。トレーダーは、通貨の「売り」または「買い」の新規取引、および新規取引とは反対取引となる決済取引を行うことにより、為替変動の差損益を決済することになります。

なお、一部の取引会社では外国通貨をキャッシュ(現物/現金)で引き取ることもできますが、通常の取引においては、差金決済のみがなされます。
トレーダーは、外国為替証拠金取引にともない、取引手数料を支払うことになります。たとえば、1万通貨単位(1ロット)あたり往復500円の取引手数料を支払います。

■インターバンク市場では、100万通貨単位(たとえば、100万ドル)を「1本」と呼び、100万通貨単位で取引します。また、「買いたい値」や「売りたい値」を仲介業者に指値注文することでインターバンク市場の「市場取引レート」が形成されます。この「市場取引レート」が、外国為替証拠金取引を行う取引会社がトレーダーに対しての取引提示レート(取引システムに表示されるレート)に反映されます。

通常、1本の取引につき2,000~4,000円の取引手数料が、仲介業者の収益となります。手数料は、金融機関ごとにキャップ(cap:手数料の上限設定)やボリュームディスカウント(一定取引高レベルからの割引設定)を設けている場合もあります。

【 取引会社とトレーダーとの間で用いられる為替レートの設定方法 】
取引会社は、為替変動によるリスクをヘッジするために、トレーダーとの間で行う外国為替証拠金取引に対応する外国為替証拠金取引を、ヘッジ先金融機関との間で行います。

取引会社がトレーダーとの間で適用する為替レートは、ヘッジ先金融機関との間の外国為替証拠金取引に用いられる為替レートに、取引会社の利益分を上乗せしたレートとなっています。なお、取引会社の利益分は、同通貨ペアにおいては一定であり、トレーダーに対して提示する為替レートは、ヘッジ先金融機関から提示される為替レートに連動することになります。

たとえば、トレーダーが取引会社とドル売り円買い取引を行う場合、ヘッジ先金融機関から113.39(ヘッジ先金融機関が1ドルを113.39円で買う)の提示があるとき、取引会社はトレーダーに対し、113.38(取引会社が1ドルを113.38円で買う)の提示を行います。

これにより、取引会社は、トレーダーから113.38円で買った1ドルを、ヘッジ先金融機関に対し113.39円で売ることができ、為替利益を得るとともに、為替変動によるリスクをヘッジすることができることとなります。なお、取引会社は、トレーダーに対して常に「買値」と「売値」を同時に提示します。

このようにして、ヘッジ先金融機関の提示した為替レートに基づき、取引会社における外国為替証拠金取引の為替レートは設定されています。

また、ヘッジ先金融機関は、インターバンク市場において外国為替取引を行っている金融機関であり、ヘッジ先金融機関から提示される為替レートは市場価格(銀行間の取引レート)を前提としています。

■インターバンク市場では、金融機関は仲介業者が提示する取引レートで取引するか、指値注文、もしくはダイレクト・ディーリング(DDともいいます。懇意にする銀行に取引レートの提示を求める)することで為替取引を行います。仲介業者では、たとえば113.35-38で取引レートが提示されているとき、A銀行はB銀行に対するDDで、113.36-39と提示もします。したがって、外国為替取引は代表的な相対取引といわれる所以であるように、株式市場で取引されるような一定の取引値は存在しないのです。

また、メガバンクや格付けの高い金融機関に対してはナロー(narrow)な取引レート(スプレッドが小さい)を提示、地方銀行や格付けの低い銀行に対してはワイド(wide)な取引レートを提示することで取引リスクと信用リスクにも備えます。

したがって、外国為替証拠金取引でも、取引会社ごとに提示レートが違うのは、ヘッジ先金融機関からの提示取引レートに起因するものです。

さて、最近では取引手数料を無料にする外国為替証拠金取引会社もあります。これは、顧客と取引口座数、それに比例して取引高が増えることを期待しつつ、スプレッドとスワップ金利の差益、さらにはディーリングによるプロフィットで、手数料収入ゼロをカバーする収益を見込む戦略があるからです。そうしたビジネスモデルで収益確保ができる取引業者であるかを、トレーダーは見極めることが大切になります。なぜならば、手数料をチャージすることは、資本経済の原則において正当な行為であり、企業の経営基盤を成す収益源であるわけですから。よく 「タダより高いものはない」 って言いますよネ。


取引の執行とモラル


0月10日の体育の日。2000年からの暦で、10月の第2月曜日が体育の日となってから久々の10日の祝日ですね。統計上、この日は”晴れ”の確立が高かったのに、残念ながら今日の東京はあいにく雨。天候も為替も過去の動向から先を読むのは難しいですね。

さて、「為替の謎‐15」で、手数料の無料化が盛んだと記述しましたが、さらにスプレッドをNarrowにした組み合わせサービスもで始めました。これ は、IB事業者ではヘッジ先金融機関からのキックバックを得るビジネスモデルによります。しかし、IB事業者は取引先リスクが大きくなることで、将来は収 益構造の分散化が必要になるかとも思われます。また、同様なサービス提供を展開するPRC事業者は、ディーリングリスクが伴います。


【 外国為替証拠金取引の注文執行 】

  1. 取引会社は、ヘッジ先金融機関が提示する取引レートに、一定の利益を上乗せした為替レートをトレーダーに提示します。トレーダーは、自宅のパソコンで、取引システムの画面上に提示される為替レートで取引しようとするとき、該当箇所をマウスでクリックすることにより、外国為替証拠金取引の注文ができます。

    たとえば、取引画面に提示される114.05円でドルを買おうとするとき、該当箇所をマウスでクリックすることにより、「ドル買い/円売り」の注文をします 。

    そして、取引会社は、トレーダーからの注文を確認すると、ヘッジ先金融機関が取引会社に提示している114.04円で「ドル買い/円売り」の注文を行いま す。取引会社は、このように、トレーダーと行った取引を、ヘッジ先金融機関との間においても行うことにより、取引リスクを解消します。

  2. トレーダーが、「ドル買い/円売り」の取引を行った場合、決済取引として「ドル売り/円買い」の取引を行い、差金決済をすることになります。ト レーダーは、決済取引においても、取引画面に提示されている、該当箇所をマウスでクリックすることにより、「ドル売り/円買い」の取引を行います。さら に、トレーダーの決済取引についても、取引会社は、トレーダーと行った取引をヘッジ先金融機関との間で行うのです。

■インターバンク市場は、外貨の需要と供給、そしてスペキュレイティブによってプライス形成されます。したがって、ヘッジ取引とスペキュレイティブな取引 の交錯で市場が構成されます。外国為替証拠金取引の取引会社は、常に取引レートをトレーダーに提示していますが、インターバンク市場では主な経済指標前で は取引提示レートは市場から消え、経済指標が発表された直後にはそれまでの取引レートとは大幅に乖離した、しかもスプレッドは50~100ポイント・ワイ ドな市場プライスが突如として提示されることもしばしばあります。したがって、外国為替証拠金取引では、こんな時でも取引会社が通常通りの一定スプレッド で取引レートをトレーダーに提示することは、取引リスクが高くなることに他なりません。

【 スワップ金利について 】
外国為替証拠金取引は、為替の直物(SPOT)取引と為替のフォワード(FORWARD)取引の組み合わせでできた金融商品です。トレーダーが「ドル買い/円売り」の取引を行い、当日中に「ドル売り/円買い」の決済取引を行わず、翌日に決済取引を持ち越したとき、直物取引の応答日に ドルを貸し出し、円を調達するフォワード取引が行われることになります。現状では、ドル金利は円金利より高いため、「ドル買い/円売り」の取引をしたト レーダーはスワップ金利を受け取ることになります。

■金融機関は、多様な金融商品を組み合わせることで、あらゆる金融商品の取引リスクをヘッジしています。IRS、FRA、金利オプション、外貨デポジッ ト、外貨デリバティブズや通貨オプションなどを駆使することで取引リスクの軽減を図っています。外国為替証拠金取引は、スポット取引からフォワード取引、 さらには外貨デポや円デポなどにも連動してスワップ金利は発生します。

【 外国為替証拠金取引の合理性 】
外国為替証拠金取引は、新たな資産運用先としてのポートフォリオへの組み込み、スワップ金利を受け取る長期保有などを目的として、取引高が順調に伸びていることは、新たな資産運用先として注目されてきたものと考えられます。また、個人や中小企業においては、外貨預金や貿易決済の為替リスクに対応する手だてがありません。例えば、ドル預金をしている個人は、ドル安時には利息より大きな為替差損が生じ、満期日において、円価した場合には、元本割れした状態で預金を受け取ることになります。

そこで、外国為替証拠金取引により、予め「ドル売り/円買い」の取引を行い、決済時に為替差益を得ることにより、ドル預金の為替差損と相殺することが可能 になります。外国為替証拠金取引は、個人や中小企業にとって、為替のリスクヘッジを容易にする経済的合理性のある金融商品でもあるのです。

■日本の株式市場は、長年外国人による売買動向が市場に大きく反映・注目されてきました。新聞記事の一説によると、最近の株高において 「高い運用利回りを狙った個人の外貨投資の急増」 により外国為替市場で円高が抑えられている、との見方を示しています。背景には、ドル/円の直物売買高80億~110億ドル/1日(東京市場)のうち、外国為替証拠金取引が2割近くにも達し、「外国人の円買いをも相殺している」 と解説しています。外国為替証拠金取引は、ひと昔まえのアジア通貨危機で話題になったヘッジファンドに迫る影響力を持つ市場規模に育っていくのかもしれません!?


改正金融先物取引法の施行から3ヶ月が過ぎ、外国為替証拠金取引会社は登録に向けた財務強化のために分社化や増資、さらには大手企業による新たな収益分野へ進出するために、法務と会計のデュー・デリジェンスをクリアーした優良企業の買収も盛んです。

その反面、すでに10数社は当局によって業務停止/業務改善命令の行政処分が出されています。それらの対象会社は、債務超過状態であったことから破産手続きも同時に進められており、改めて経営者の社会的モラルが問われています。

つい最近、社会問題として連日ニュースを賑わした不必要なリフォームを行ったとして処分された会社は、社名を次々と変えて同様な訪販を続け被害は広がって しまったように、外国為替証拠金取引業界でもそれに類似したチェーン会社も現れているようです。これまでに聞いたこともない、またインターネットのサイト でも見かけない取引会社が行政処分されていることから、投資家は自身の目と耳で取引会社を選択することが大切になりますネ!


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