直物(SPOT)取引?


夏真っ盛りの日本列島。今年は “クールビズ(COOL BIZ)” 提唱のおかげで、夏の軽装スタイルもすっかり定着♪ 通勤も外出も、人に会うときも夜街に繰り出すときも、ノーネクタイにノースーツ。
でも、郵政民営化論議で混沌とする政局や人民元の切り上げ後の為替相場のアップダウンなど、一部では暑い夏の陣を繰り広げていますね。
さて、ここでは、夏休み中に、先につながる為替取引戦略を考える一般投資家のために、外国為替取引のメカニズムの復習とポジションを長期保有するためのステップを、クールに “為替の謎” 2回分をいっきに掲載して、夏休み突入♪

(A)
インターバンク市場(金融機関同士が相対で行う為替取引)で取引される為替の直物(SPOT)取引は、主として外貨資金の調達を目的に通貨の交換を行っています。また、日本の金融機関とアメリカの金融機関で取引されることを想定し、時差の関係で通常取引において約定日の2営業日(応答日・ヴァリューデイト)後に決済(通貨の交換)が行われます。
例えば、今日、A銀行は110円で1万ドルを買う約定をB銀行と交わしたとき、明後日A銀行はB銀行から1万ドルを受け取り、B銀行はA銀行から110万円を受け取ります。
(B)
外国為替証拠金取引も、直物取引です。
例えば、顧客は、110円で1万ドルを買う約定を取引会社と行い、約定した保有する通貨を現金で受け取りたい旨をあらかじめ取引会社に連絡しておくことで、交換日に顧客は110万円を取引会社に振り込み、取引会社は顧客へ振り込みます。
(* すべての取引会社が扱っているわけではありません)
(C)
一般投資家や中小企業は、外貨預金や貿易決済の為替リスクに対応する手立てがありません。例えば、ドル預金をしている個人は、ドル安時には利息より大きな為替差損が生じ、満期時で円価した場合には元本割れで預け入れ資金を受け取ることになります。そこで、外国為替証拠金取引でドルを売り、決済時には為替差益を獲得することで、ドル預金の為替差損と相殺できます。外国為替証拠金取引は、一般投資家や中小企業にとって為替のリスクヘッジや資産運用の分散投資先として経済的合理性のある金融商品でもあります。
(D)
外国為替証拠金取引のメカニズム:

顧客は、ドル円でドルを買った後、同日中(米国東部時間17時まで)に反対売買となるドルを売る取引を行った場合には、その為替差損益だけの受け渡しで決済が終了します。「ドル買い/円売り」取引と「ドル売り/円買い」取引により、2営業日後にはその二つの約定取引の受け渡しは相殺されることになるからです。
顧客は、取引で約定した「ドル持ちポジション」を、翌日以降に「ドル売りすること」を持ち越したとき、スワップ金利が発生します。スワップ金利とは、通貨の貸出金利と借入金利をいいます。
外国為替証拠金取引は、為替の直物取引と為替のフォワード取引の組み合わせでできた金融商品です。②の場合、翌日に「ドル売り」決済を持ち越したとき、ドルを貸し出し、円を調達するトムネと呼ばれるフォワード取引が行われます。この結果、約定日の2営業日後で受け渡しに必要な円が調達できるのです。現状では、ドル金利は円金利より高いため、顧客はスワップ金利を受け取ることになります。もちろん逆に、ドルを売る取引を行った顧客は、スワップ金利の支払いが日毎に発生します。

外国為替証拠金取引に参加する多くの投資家は、短期の取引による為替差益獲得を狙っているようです。でも、ポジションの長期保有を外貨運用戦略に、マーケット参加する投資家もたくさんいます。


外貨の長期運用戦略


≪為替取引の初心者で、1万ドルの外貨(米ドル)運用を中長期で考える人にお勧めの取引戦略≫

取引しようとする為替水準から、まず1から5へと順に、自問自答してみます。

  1. 「ドル円は、50円までの円高はありえるか?」
  2. 「ドル円は、75円までの円高はありえるか?」
  3. 「ドル円は、80円までの円高はありえるか?」
  4. 「ドル円は、90円までの円高はありえるか?」
  5. 「ドル円は、100円までの円高はありえるか?」

【為替レートの情報】
(a)過去の円高局面での円の最高値は、1ドル=79円75銭(1995年4月)
(b)過去5年間の円高局面での円の最高値は、1ドル=101円67銭(2005年1月)

1ドル=112.00円のとき:
【為替レートの情報】を参考にした上で、1で「YES」と答えた方は、為替リスクをカバーしておくために112円-50円の差額分である可能証拠金62万円(1万ドルにつき)を預託しておくことが大切です。
「NO」と答えた方は、2へ進みます。この手順に沿って出した結果が、自身が考える為替リスクです。

さて、1ドル=112.00円で 「ドル買いポジション」 を考え、『運用期間中の円高リスクを1ドル=78円までは容認する(112円から34円の円高局面までリスクは取れる)』と取引戦略を決めた場合:

  1. 維持証拠金: 5,000円
  2. 取引手数料: 500円
  3. スプレッド5ポイント: 500円
  4. 為替リスク分の証拠金(可能証拠金): 34万円

A+B+C+D = 34万6千円の証拠金を預託した上で「外貨建て運用」することをお勧めします。

金融機関で1万ドルの外貨預金をするためには、112万円以上(手数料が上乗せされます)のキャッシュを用意・両替する必要があります。でも、外国為替証 拠金取引は、自己の許容できる為替リスクを十分に検討しておくことで、上記の例では35万ほどのキャッシュで外貨預金と同様な運用が可能となります。さら に、112万-34万6千円=77万4千円を、他の金融商品(株式、債券等)で分散運用することも、または複数ロットで外貨運用も可能になります。

≪過去の円の最高値を更新するような円高局面へ向き、ドル円の取引レートが78円から77円で取引する為替変動があった場合には、あらかじめ設定した為替 リスクの78円でマージンカット(ロスカット・ルール)により自動清算されます。この結果、維持証拠金の5,000円を上回る清算レートでの決済であった 場合、預託証拠金を上回る損失が出る可能性もあります≫
(*このドルの運用ケースでは、スワップ金利を日毎受け取るため、必ずしも78円でマージンカットされません)

【余談】

  1. 過去10年間の円安局面での円の最安値は、144円86銭(1998年8月)
  2. 過去1年間の円安局面での円の最安値は、114円87銭(2004年5月)

 


7月1日 改正金融先物取引法が施行され、外国為替証拠金取引業者は財務強化を図り始めましたね。一般投資家向けの外国為替証拠金取引が、健全で有益な資産分散先となる金融商品として、早期に確立すればいいですネ!


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