市場関係者の言葉?


“♪Happy Birthday M♪”
そのMが、最近 「為替の市場関係者といわれる人たちが、サイトや新聞紙上のコラムに、それぞれが様々な私見でコメントしているけど、個人投資家はそれを取引にどう活かせばいいの?」と口にしていました。確かに、多くの専門家といわれる市場関係者が、為替の市場動向を予測、解説、分析、そしてアドバイスしています。一般投資家はどのように受け止めたらいいのか?「レジスタンス」を例に「為替の謎11」で考えてみましょう。

為替のチャート分析で「レジスタンス(Resistance)」というテクニカル分析用語を耳にすることがあります。外国為替の市場関係者は「国内輸出企業の円買い需要で、109円の80銭にはドル売り円買いオーダーが控えている」とか「上値は重そうだ」と口にすることがあります。これは「このレベルを超えて、これ以上は上がりにくい(ドルを買いにくい)」≪上値抵抗線≫と見るからです。

また、104円から109円のボックスでレンジ取引され、現在の取引レートが108円50銭である時に、市場関係者は「109円80銭を付けにいく上値トライ」・「109円80銭が付いたら上値が放たれ、次の上値抵抗線の110円60銭まで買い進まれる」 と見解を示すことがあります。

さて、これを耳にした為替取引の初心者は、まず 「110円60銭までいくんだったら、現在の取引レート108円50銭は安い!買い増ししよう」 とポジションを膨らまそうと思ってしまいます。しかし、この取引戦略には危険が伴っています。この初心者は、各種経済要因・金融当局の政策発表等々、チャート分析だけでは図れない為替変動の要因を考慮に入れていません。さらに、「109円80銭を付けるまでには、ボックス圏内で何回か下値と上値でレンジ取引を繰り返す波がある」という為替動向に気づいていません。その結果、買い増した分、預け入れている証拠金は減り、損失をカバーする1ロットあたりの可能証拠金も小さくなることで、為替リスクは高まってしまいます。今までよりもマージンカットレベルが上昇することで、最悪の場合すべてのポジションがマージンカットによって清算されてしまうかもしれません。為替差益を得られたにもかかわらず、判断ミスと利益欲のために、逆にみすみす為替差益をGETするチャンスを逃してしまうことになります。

例えば、1万ドル(1ロット)の取引口座で、取引手数料が500円、維持証拠金は5,000円、スプレッドが5pipsである場合:
30万円の証拠金の預け入れをして、1ドル=108円で5万ドル(5ロット)の「ドル買い円売り」ポジションメイクをした時、102円55銭までの為替リスク(1ロットあたり5円40銭)を取ることが可能です。

■5ロット買い付け時の可能証拠金計算:

  手数料:     500円 × 5ロット  =  2,500円
  維持証拠金:  5,000円 × 5ロット  = 25,000円
  スプレッド分:  500円 × 5ロット  =  2,500円
          (108円で買い付けたときの売値は107.95であるため)

  可能証拠金 = 預託証拠金 - (手数料+維持証拠金+スプレッド分)
        = 30万円 - (2,500円+25,000円+2,500円)
        = 27万円

1ロットあたり、可能証拠金でカバーができるリスク許容範囲は:
(可能証拠金 ÷ ロット数)である5円40銭となり、すなわち102円55銭-60銭の取引レート提示になったとき、102円55銭でマージンカットが執行されます。

110円までドル高になると期待し、現在の取引レート108円50銭でさらに2ロットを買い増しした場合、その瞬間には初期の預け入れ証拠金30万円でカバーできる為替リスクは1ロットあたり4円に低下し、104円45銭までマージンカットによる清算レベルは上昇することになり、取引リスクが高まります。

■2ロット買い増した際の可能証拠金計算:

 すでに保有する5ロット分の利益: 45銭 × 5ロット = 4,500円 × 5 = 22,500円
 2ロット買い増し手数料:     500円 × 2ロット = 1,000円
 2ロット分の維持証拠金:    5,000円 × 2ロット =10,000円
 2ロット分のスプレッド:     500円 × 2ロット = 1,000円

すなわち、2ロットの買い増し後には:
可能証拠金は280,500円 (27万+22,500円-12,000円)となりますが、7ロット保有する1ロットあたりのリスク許容範囲は4円に低下、円高で104円45銭-50銭の取引レート提示になったときには、104円45銭ですべての保有ポジションがマージンカットの対象になってしまいます。


レジスタンスとサポート


≪為替の謎-11≫からの一週間で、ドル円はものの見事に上値が放たれましたネ。これまでに何回か109円後半で上値トライを試みていただけに、今後、新たな取引レンジの形成に注目です。
さて、「レジスタンス」に関係する市場関係者の言葉を、どのように自身の取引に反映させた上で、リスクを軽減した取引ができるのか? 1週間前の過去にさかのぼったことにして考えてみましょう。本当は、未来の為替動向予測ができればいいのですが。。。

その①
現在の為替差益が出ている複数のポジションを保有継続して、新規の買い増し取引は行わない。109円80銭の前後から110円60銭までの間で利益確定のために、複数回に分けて決済する。
その②
複数の保有ポジションの内、いくつかは109円80銭から110円60銭までに利益確定の決済を行い、為替動向によってはその決済取引レートよりも安値レートで新たに買い直す。
その③
一旦すべてのポジションを110円60銭までに複数回に分けて決済することで利益を確定をし、その後の為替動向によっては、下値レートで買い直すポジションメイクをする。

さらに、上値抵抗線の109円80銭や次のターゲットとなる110円60銭で利益確定にための指値注文を設定するのではなく、109円70銭や110円 50銭程度のレベルで、確実性を狙った取引戦略が有効です。「まだ上がるだろう」なんて欲張らずに、次につながる取引を進めることが運用成績を高める為替 取引になると考えます。

もちろん、為替変動をカバーする余裕のある可能証拠金が預託され、かつ、リスクを積極的に取ることができる投資家はこの限りではありません。ただし、下落 リスクだけは忘れずに!次のターゲットとなる110円60銭へたどり着くまでには、上値と安値を行き来するボックスを再度形成するものです。

ところで、昨秋の米大統領選挙直後から危惧されていた米国の「双子の赤字」はどこへやら?すっかり忘れられたかのように、話題・注目点は欧州のEU憲法の 批准案否決がきっかけとなったユーロの下落、そして米国と欧州の金利差拡大観測に欧州の金利引き下げとインフレ危惧の綱引き、原油高に中国の人民元切り上 げ時期の思惑へと注目点が移り、ドル全面安だったこれまでの6ヶ月間とは大きく様変わり。市場関係者のコメント内容も市場の見方をガラッと変貌。個人投資 家は、自身の運用戦略にStrategistやアナリストと呼ばれる市場関係者のコメントを消化しながら、為替動向と仲良く付き合って行くことが大切です ネ。

【逆に「ドル安円高」局面では、市場関係者は「レジスタンス(上値抵抗線)」に対して「サポート(下値支持線/Support)」の“下値トライ”に注目します】

≪為替リスクは、レバレッジの高低ではなく、預託した証拠金に対しての取引額比率に影響されることを忘れずに、保有ポジションの管理をすることが望まれます≫


さて、いよいよ明日7月1日、改正金融先物取引法が施行されます。現時点で外国為替証拠金取引業を行っている会社は、経過措置として12月末までは金融先 物業者としての登録は猶予されますが、そのほかの規制は遵守しなくてはいけません。また、金融庁の監督指針では、投資家が守らなくてはならない行動規範も 掲示されています。よりフェアなマーケットを形成するために、最近の為替動向を気にしながらも、業界と投資家が共有できる統一化された早期「取引ルール」 の導入が望まれますネ。


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