Part7


パート7では、インターバンク市場で遭遇する「仕掛ける人、後追いする人」についてお話します。


システム取引
インターネットを利用したシステム取引では、常に利用者側と提供者側の通信環境によってその快適さは左右されます(ソフトの仕様にもよりますが)。 ダイヤル回線からISDN、ADSLから光ファイバーと、高速通信の普及によるブロードバンドを利用したシステム取引は、一般投資家も株式や為替取引を24時間好きな時に、しかもリアルタイムで様々な情報を得ながら行えるようになりました。また、インターネットのおかげで金融取引自体の透明性も高まりを増し、いつでも・誰でもが同じ条件で取引できるようになってきました。 しかし、インターネット取引といえども万全ではありません。通信回線のトラブルやサーバーのダウンがあったり、システムを利用する側・提供する側にとって悩ましい問題も起こったりします。
ボイスブローカー取引
1980年代後半から90年代初頭、インターバンク市場では、数社のボイスブローカー(仲介業者/為替ブローカー)によるグローバルネットワークを利用した外国為替取引が主でした。為替ブローカー各社は、世界各国の主な市場の支店や提携先と電話回線を利用したダイレクトラインで、さらに金融機関の資金為替部との間にダイレクトラインを結んでいます。ダイレクトラインの先には、マイクとスピーカーが設置され、為替ブローカーによる取引通貨のプライスコート(連呼)で、プライス形成と取引が行われています。
為替マーケットでは、実需による取引はもちろんのこと、真っ先にマーケットプライスをヒットする仕掛けを好むスペキュレイティブな取引をするディーラーと後追いでヒットするディーラーが存在します。
一社の為替ブローカーでレートが出合っている(取引されている)と、まだそのレートを連呼している他の為替ブローカーをヒットする後追いディーラーが現れます。一人の為替ディーラーだけならいいのですが、東京・シンガポール・香港・ロンドン・ニューヨーク市場などの金融機関が一斉に何十人というディーラーがたった一つのプライスに同時に群がってきたのなら、想像してみてください、その有様を。
同時に複数のディーラーがヒットした場合には、ブローカーは出合った本数(金額)を比例按分によって配分することで、何とかその場をしのぎます。これは、以前ご紹介した「外国為替・資金取引に関わる行動規範」(『 Code of Conduct 』【PDF】東京外国為替市場委員会 刊行/2003年版、別名「オレンジブック」といわれるインターバンク市場の取引ルールを定めた教本)にも、そのような場合をも想定したルールが明記されています。
ディーラーにとっては、無いプライスを連呼しているブローカーが悪く、ブローカーにとってはきわどいところを狙い撃ち(後追い)するディーラーが悪く、なかなか二者の優劣は付けがたい状況が生じます。しかし、こういったディーラーの評判はたちまちブローカーの間に広まり、きわどい取引からトラブル回避する対策をとります。
また、オーダー(指値注文)を出している為替ディーラーは、ある一社のブローカーで出合いがあると、「他社では付いているぞ(取引されているぞ)」と(よく言えば)インフォメーションを伝え(悪く言えばプレッシャーを与え)てきます。最近では、このような光景が外国為替証拠金取引でも見受けられるようになってきました。
電子ブローキングの台頭
しかし、折しも90年代前半になると、画期的な取引システムが現れます。それが電子ブローキングシステムの登場です。初期の頃は「人間味に欠ける」と揶揄され、声を張り上げて「yours」・「mine」と響くディーリングのダイナミックな取引から、キーボタンを淡々と冷静に叩くシステム取引が普及するまでには、時間がかかると思われていました。
しかし、数年後には電子ブローキングによる為替取引は80%近くのマーケットシェアを獲得するまでになったのです。取引システムに熟知する若いディーラーは、シンプルでフェアな電子ブローキングシステムでの取引を好み、相変わらず後追いやトリッキーな取引手法をとるディーラーはボイスブローカーを好んだりもします。
■ これからの外国為替証拠金取引 外国為替証拠金取引でも同じことが見えてきます。1998年の外為法改正による為替取引の自由化以後にお目見えした証拠金取引は、電話取引だけであった取引も、ブロードバンドの普及と取引システムの開発で、使いやすさによるインターネット取引が台頭したこと、また平成17年7月1日施行の「金融先物取引法の一部を改正する法律」により、いままで自己売買にも似た取引形態で業務を行ってきた事業会社は、衰退の一途をたどろうとしています。
個人投資家の中には、システム取引特有の手法を試すセミプロも現れ始めました。インターバンク市場で各金融機関が複数の為替ブローカーを利用するように、外国為替証拠金取引会社を数社同時に使い分ける個人投資家も現れています。為替取引ルールなどを熟知・理解しないまま、ルールを逸脱した身勝手なクレームをする投資家も中途半端に現れ始めています。取引ルールに沿った健全な取引をする事業会社と投資家、またそうでない事業会社と投資家が混在する現在の外国為替証拠金取引市場は、「金融先物取引法の一部を改正する法律」による法整備と共に、投資家に対する特異な為替取引ルールの明示、電話取引からインターネット取引へ移行し始めたマーケットの成熟期に近づく狭間にあると思われます。


これまでのFXCAFE.JP掲載コラム「インターバンク市場のひとコマ」で、読者の皆さんには今後の外国為替証拠金取引の≪マーケット未来像≫が、徐々に見えてきたかと思います。
// by R
04/28/2005 UP


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