Part6


日本は、戦後政策として、経済産業の復興資本調達のために「貯蓄促進」を国民に奨励してきました。しかし近年、個人のライフスタイルに見合った多様な資産運用への「意識改革」を国策にする政策転換が行われています。政府は、金融システムの再構築と金融緩和をすることで、私たちが自らの責任(リスク管理)によって、自分自身のお金が効率的に”働く”金融資産の運用することを求めています。
日本経済の今後を占う上で、為替動向は重要な要因のひとつです。為替動向が、株価・長期金利・企業業績・個人消費・設備投資・地価等に影響を与えるからです。バブルの崩壊で、「失われた10数年」といわれますが、2004年の日本経済を検証すると、上場企業を中心に過去最高の利益を更新したりと、「回復基調にある」といわれ始めました。
日本経済を振り返る上で大切なことは、バブルであった当時でも、CPI(消費者物価指数)&WPI(卸売物価指数)は、約4%の低位に安定していたことです。ただ、狂乱とも思われる資産価格(株価や地価など)が急上昇し、また個人消費(GDPの60%を占める)も堅調であったために、実体経済は上向いていたのです。したがって、今後の日本の復活は、資産効果で実体経済が上向くかどうかにある、ということに他なりません。
過去10数年のドル円のマーケットと金融政策を見る上で、アメリカ経済はどうであったかというと、株価や地価は91年の湾岸戦争以降も堅調に推移しており、もしもその当時、日本ですでに為替自由化がされていたのなら、多くの人がアメリカ株での運用や土地の売買による運用益を上げていたことでしょう。そして、その資産が日本に戻り日本での資産効果が現れていたはずで、長いデフレ経済を過ごすことにはならなかったと思われます。
円高は国際競争力を削ぐものといわれます。日本が世界の工場と呼ばれていた地位が中国へと移り、また相対的に国内旅行は敬遠され海外旅行の人気は衰えてはいません。そのために日本では企業倒産や地価の下落が止まらずにきていました。しかし、最近になってJリートの低下傾向が現れ始め、東京23区や東京南西部の購入価格は上昇し始めています。その面積は国土の3%あまりであるにもかかわらず、地価では40%近くを占めており、基準地標準価格でも都心を中心に資産価格が上昇に転じる傾向にあります。また、決して円高は日本にとって悪影響を及ぼす要因であると悲観することはありません。なぜならば、少なからずも“円”の価値が高まることで、世界の中での日本の存在価値を再認識できる重要な機会でもあるからです。
そして、さらに資産効果を押し上げるためには、金融政策の緩和策の継続はもちろんのこと、個人が資産を増やそうとするには、ポートフォリオの組み換えが重要になります。クレジットリスクや流動性リスク、マーケットリスクをとるリスクスタンスのマインド変換が必要になってきます。ただし、生活費や退職金などの資金でリスクをとった資産の運用は、もっての外であることは言うまでもありません。
昨秋の米国大統領選挙後、為替マーケットはアメリカの「双子の赤字」といわれる財政赤字と経常赤字を懸念材料に、またアメリカ経済界の意向による円高容認説の思惑、さらに減税効果が2005年には薄れることから、米国経済の実態は堅調ながらも悲観論が台頭し始めます。別の角度からの見方をするのならば、日本がバブル景気の終期であったころの91年当時のドル円の為替レートは1ドル140円ぐらいであり、本来ならばそれに近い為替レートであってもおかしくはありません。なぜならば、金利は日本と比べ米国の方が高く、経済においても米国の方が良好であり、円の価値がドルに対して高くなるはずがありません。また、米国は「通貨の基軸通貨はドル」という米国の立場を、対ユーロに対して堅持することが国策と考えているはずであり、また米国は株価を堅調に推移させる政策を重要視していると思われます。したがって、今後の為替動向を長期で見た場合に、ドル安基調から反転することも推測されます。
しかしながら、2004年11月から続く急激なドル安円高傾向は、アジア通貨の切り上げへの思惑とユーロがらみでの欧州と米国金利の格差から、通貨当局もこの為替水準では市場介入には意見の統一がなされることは当面困難と見られることから、プラザ合意から20年の2005年1st Quarterでのドル高修正の向きはないと思われますが、「昨日も今日もドル安だから、明日も明後日もドル安基調は変わらない!?」などという為替動向の予測は成り立ちません。為替取引する上で、為替動向のターンニングポイントを見極め、ポートフォリオを組み直す際には、強い通貨で運用することが必要です。そのためには、リスク管理、すなわち「時間の管理」が大切になります。24時間もの間、為替動向や関連ニュースをリアルタイムで追いかけることはできませんが、世界中で発信し続けられる経済ニュースや金融政策に関するコメントには、日頃から関心や興味・好奇心を示すことが大切です。
// by R
01/30/2005 UP


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