Part3


パート1 ・ 2では、インターバンク市場の「プライス形成」・「取引ルール」・「外国為替証拠金取引の合理性」・「取引の成立」について紹介しましたが、今回は「外国為替証拠金の取引メカニズム」をお話します。
直接取引
インターバンク市場では、金融機関の間で直接取引もします。仲介業者や電子ブローキングシステムを利用せずに、ディーラーがブルームバーグやロイターなどの情報端末機器で直接金融機関を呼び出してプライスの提示を求めます。
たとえば、Y銀行のディーラーAは、Z銀行のディーラーBに「ドル円で20本(2000万ドルの取引)プライスだして!」と依頼するのです。Bは「109.89-91」と提示し、Aが「mine(マイン/買いたい)」と告げ、Bは「done(取引成立)」と意思表示を告げた時点でAとB間で取引が成立。一連の取引では、AはBとの間で「109.91で2000万ドルのドル買い/円売り」取引が成立したことになります。
Bは、たとえばマーケットプライスが109.87-90であるとき、仲介業者や電子ブローキングシステムを介し、「109.90で20本mine」とヒットしヘッジすることで、Aと取引した91とマーケットでヘッジした90の差がプロフィット(profit/利益)となるのです。
したがって、「マーケットプライス」といわれているプライスは、ある値幅をもたせた平均的市場取引レートを提示しているともいえます。BはAに「109.89-92」と提示したのに対して、DはAに対して「109.87-89」と提示するかもしれません。情報配信会社では、いくつかの金融機関や電子グローキングシステムのレートを参考に、報道機関などへ配信をしているのです。その結果「現在は109.87-91で取引されています」といったニュース報道となるわけです。金融機関は、インターバンク市場でいくつかのプライスをチェック(問合せ)した上で、その時のベストレートをヒットしているのです。
SPOTマーケット
AとBが行った取引は、「SPOT取引(スポット取引)」と呼ばれる為替取引です。ドル円のSPOT取引では、2営業日後に決済(受渡し)されます。Aの金融機関はBの金融機関に21億9820万円を振り込み、BはAに2000万ドルを振り込むことによって一連のSPOT取引は完結します。
SPOT取引では、世界中の金融機関の間で取引を行うために、時差や事務手続きを考慮して、2営業日後に決済するようルール化されています。この二日間の決済リスクに対応するため、金融機関は予め相手先との取引にクレジットラインを設定しておきます。
証拠金取引のメカニズム
さて、外国為替証拠金取引は、SPOT取引にフォワード(Forward)取引を組み合わせることで、ロールオーバー(決済の繰り延べ)を可能とした金融商品です。
SPOT取引で、たとえばAは、Bと109.70で10万ドルのドル買い/円売り取引をして、その当日中に反対売買としてCと109.90で10万ドルのドル売り/円買い取引をした場合、決済日となる2営業日後にはAは10,970,000円をBに振り込み10万ドルBから受け取り、また、Aは10万ドルをCに振り込み10,990,000円をCから受け取ります。したがって、Aは決済日に10万ドルもしくは相当の円を現金で調達することなく、為替差益の20,000円を手にすることができます。
しかし、Aは、Bと109.70で10万ドルのドル買い/円売り取引を行い、反対売買をすることなく翌日を迎えた場合には、Aは取引日から2営業日後に10,970,000円をBに振り込み、10万ドルをBから受け取る決済をするために10,970,000円の現金を調達しておかなくてはなりません。
そこで外国為替証拠金取引では、フォワード取引のトムネク(tomorrow next)と呼ばれる取引を組み合わせます。フォワード取引は、通貨の調達金利差(金利スワップ市場で取引される)を反映させた為替取引で、オーバーナイト(over night)取引から10年といった長期にわたる取引があります。トムネク取引とは、その言葉のとおり、取引をした翌日に取引した通貨の受渡しを行い、翌々日には金利を反映してその反対売買の受渡しを行う取引です。
外国為替証拠金取引は、取引したポジションのロールオーバーに合わせ、トムネク取引を組み合わせます。ドル買い/円売りのSPOT取引した場合では、その翌日にドル売り/円買いのトムネク取引をすることで、SPOT取引の決済日には必要な円資金が調達され、トムネク取引を繰り返すことでさらにロールオーバーが可能になります。
この場合のトムネク取引では、ドルを貸し付けて円を調達した取引であるため、現状でのドルと円の調達金利差から発生するスワップ金利を日毎に受け取ることになります。逆に、SPOT取引でドル売り/円買いをしてロールオーバーするには、トムネク取引では円を貸し付けてドルを調達するためにスワップ金利を日毎に支払うことになります。
したがって、外国為替証拠金取引は、事業者のカウンターパーティである金融機関がSPOT取引にフォワード取引を組み合わせることでロールオーバーが可能となるのです。また、外国為替証拠金取引は、インターバンク市場で取引される様々な金融商品の組み合わせによって派生した金融商品であり、取引決済時の為替差益とスワップ金利の受け渡しによる資産運用を目的とした取引といえます。
// by R


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