Part2


パート1 では、インターバンク市場の「プライス形成」・「取引ルール」、そして「外国為替証拠金取引の合理性」についてご紹介しましたが、今回は「プライス形成と取引の成立」についてお話します。
BIDとOFFER
インターバンク市場では、指値注文(order/オーダー)で形成されているマーケットプライスに対して、取引しようとする金融機関がマーケットレートをヒットする(売買する)ことで取引が成立(done/ダン)します。
インターバンク市場では、例えば、ドル円のマーケットプライスが110.15 – 20であるとき、15を「bid(ビッド/買値)」と呼び、20を「offer(オファー/売値)」と呼んでいます。マーケットにオーダーを出している金融機関にとっては、bidのレートは「買いたい値」であり、offerのレートは「売りたい値」であるのです。
また、買いたい/売りたい金額(amount/アマウント)も一緒にオーダーします。たとえば、15でbidを出している金融機関をA、20で offerを出している金融機関をBとします。Aは15で800万ドルを買いたい、Bは20で700万ドル売りたいとマーケットにオーダーを出すのです。通常、100万ドルを「1本」と表現し、「15で8本の買い」とマーケットへオーダーを出します。
【外国為替証拠金取引では、取引業者が顧客に対して2WAYプライスで取引レートを提示して、取引主体を顧客とするためにbidを「顧客が売れるレート」(売り)、offerを「顧客が買えるレート」(買い)と呼んでいることが多いようです】
マーケットの出合い
米国が祝日で取引参加者が少なくマーケットは静かなとき、なかなか出合い(取引)はありません。そこで、Aは17(高めの値)でもいいから買いたいと考えるとき、bid を17に変更することで110.17 – 20とマーケットプライスは良くなります(improve)。Cという金融機関が売りの機会を探っていたところ、17で売れるのならばこのレベルで売ろうと17をヒットするわけです。すかさずBも売りたいとヒットした場合には、早い者勝ちでAとCの間でdoneされます。ただし、Cは300万ドルだけ売りたかった場合には、Bは500万ドル売れ、したがってAは、BとCとの取引によって110.17で800万ドル買えたことになり、Bは200万ドルの売り残りでofferを出し続けることになります。Bが17をヒットせずに20でofferを出し続けている場合には、それぞれ500万ドルの買い残りと700万ドルの売りで、引き続き17-20とマーケットプライスに変更が無いことになります。
プライス形成する上で、Aがbidを出したのに続いて、Mという金融機関が同じレートでbidを出したりもします(join bid)。このように複数の金融機関が同じレートにオーダーを出している場合もあります。早くオーダーを出していた金融機関の注文から取引は執行されます。マーケットプライスである110.17-20のbehind/ビハインド(17-20の外側)にもオーダーは出されています。「14で300万ドルの買い、13で700万ドルの買い、21では500万ドルの売り、25では200万ドルの売り」というように、プライス形成されているのです。ドル買い意欲が旺盛な市場環境であるときは買いのオーダーがたくさん並び「買いは強い」と評されたりもします。
オーダーとヒット
金融機関のディーラーの思惑やディーリングスタイルによって、取引手法は違ってきます。「オーダーをマーケットに出す」ことは、「買いたい・売りたい」という意志をマーケットに示すことでもあり、輸出業者の為替決済オーダーであったり、外貨建て金融商品のオーダー、利食いもしくはストップロスで差益や差損を確定しようとするオーダーであったりもします。また、「ヒットする」ことは、それまではマーケットに手の内を明かさずにいることにもなります。銀行間の直接取引によるマーケットへのヘッジや投機筋による仕掛けであったりもします。
クレジットラインと証拠金
インターバンク市場の取引参加者である金融機関は、金融機関同士がクレジットラインの設定をした上で為替取引をしています。あらかじめクレジットラインの設定をしておくことで、取引リスクに備えています。AはBに対して30億ドルまでの取引できるが、AはCとの間では10億ドルまでの取引しかしないというものです。また、取引ルールとして、マーケットにオーダーを出している金融機関名は伏せられています。
したがって、たとえばAがマーケットに110.15のbidを出していて、Bが15をヒットした場合に、ABお互いがラインチェックをした結果、既にAはCとの間でクレジットラインである10億ドルの取引を超えていた場合には、その取引はNothing done/ナッシングダン(未成立)になります。Nothing doneとなったことで、マーケットプライスは15の「チョイスプライス」(bidとofferのレートが同一)となったりもします。
【外国為替証拠金取引では、個人との取引をする上でクレッジトラインを設定する代わりに証拠金を預け入れてもらい、また取引申込書の質問事項や身分証明書コピーの提出を求めることにより、取引リスクに備えることで健全性を高めているわけです】
// by R


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