Part1


テレビのニュース番組で、最後に「東京市場の夕方5時時点での取引レートは110.20-25でした。現在のロンドン市場では110.10-15で取引されています」とマーケット市況が報道されます。外国為替の取引は24時間取引されているのです。
為替取引は相対取引といわれ、買い手と売り手の同意によって売買されます。「ドル円」のペアを例にとると、「ドル」を基軸にしてドルを「買う」、「ドル」を「売る」という表現をします。したがって、ドルの買い手とドルの売り手が、その時の実勢レートで取引することが為替取引です。
海外旅行をするとき、空港の銀行窓口で両替をする際に提示されている為替取引レートTTSは、通常午前10時にインターバンク市場で取引されたレート(仲値)に値幅(銀行為替手数料)を加えて、その日一日を通してそのレートで売買されています(その後、マーケットの変動によってTTSが実勢取引レートから大きく乖離した場合には、見直されることもあります)。
為替取引レートとは、インターバンク市場といわれる銀行間で取引されている実勢レートです。株式が取引されている東京証券取引所のような取引所は、為替取引にはありません。インターバンク市場は、グローバルに展開する仲介業者が専用回線を使って「買い手」の銀行と「売り手」の銀行をマッチングさせたり、銀行間でも直接取引をしています。
インターバンク市場のプライス形成
プライス形成をする上で、為替取引は「オークション」取引とも似ています。オークションに出品された品を「買いたい」という人が多ければ価格は上昇し(為替取引レートは上昇)、買いたいと思う人がいなければ上昇はしません。また、「風評」にも似ています。BSEなどの悪いニュースが出ると牛肉の価格は下落(為替取引レートは下落)します。
多くの外国為替証拠金取引事業者は、ドル円の場合では5ポイントのスプレッドで顧客に取引レートを提示しています。しかし、インターバンク市場では、ドルを買いたい銀行は「買いたいレートで買いたいアマウント」を指値注文し、ドルを売りたい銀行は「売りたいレートで売りたいアマウント」を指値注文することでプライスが形成されていきます。
例えば、A銀行は110.05で500万ドルの買い注文を仲介業者に出し、Y銀行は110.15で500万ドルの売り注文を出します。Z銀行は110.20で300万ドルの売り注文を出します。
その結果、110.05-15という「プライス」が成り立ち、それを確認したB銀行は、110.10でもいいから500万ドル買いたいと注文を出すのです。為替市場の取引レートを伝えるテレビニュースは、このインターバンク市場で提示されてる「プライス」を「現在110.10-15で取引されています」と紹介しているのです。C銀行は110.15でいいから1000万ドルを買いたいとき、Y銀行から500万ドルを買い、その瞬間マーケットプライスは110.15-20となるのです。
インターバンク市場の取引ルール
インターバンクのマーケット環境は、クリスマスや経済指標の発表前には取引参加者は少なくなります。その結果マーケットの実勢レートは109.85-110.35という場合もあります。インターバンク市場の取引ルールは、一般に「オレンジブック」といわれるものに解説され、外国為替取引に係わる者であれば、一度は目にする教本です。一度手に取ってご覧になることをお勧めします。
インターバンク市場でも取引手段として「ストップロス注文」があります。
ニューヨークにある金融機関の支店や本店の為替ディーラーは、保有ポジションのリスク管理のために、東京オフィスにリーブオーダーとして「ストップロス注文」を任せて帰宅します。東京市場でマーケット変動があり、そのストップロス注文が執行されようとするとき、その注文レートが出合った後の次のベストレートで処理されることになり、必ずしも注文レートで清算されるものではありません。
通常、インターバンク市場では、指標発表の直前には「プライスが消え」(取引参加者が注文を取り下げるため)、非連続性のマーケット環境になります。したがって、 109.80でドル売り円買いのストップロス注文は、指標発表直前のマーケットプライスが110.20-25であっても、指標発表直後のマーケットプライスは109.50-90とまったくかけ離れた取引レートが提示され、109.50で取引が出合った場合、次のベストレートで執行されます(109.50であったり109.45で約定されます)。同じように「逆指値注文」も思わぬレートで約定することもありえます。取引リスクの基礎知識をあらかじめ十分に理解しておくことが大切になります。
外国為替証拠金取引の合理性
外国為替証拠金取引は、他の金融商品に組み合わせ、資産の運用リスクを軽減したり、為替決済リスクヘッジする運用先のひとつでもあります:
A) 新たな資産運用先としてのポートフォリオへの組み込み (分散投資)
B) スワップ金利を受け取る中長期保有
C) 短期での為替差益の獲得 (時々の変動要因を敏感に判断し、「買う」・「売る」取引)
D) 為替ヘッジ (外貨資産/貿易の為替決済リスクのヘッジ)としての取引
為替マーケットは、内外の各種要因(国内要因では政局・選挙・日銀介入・決算期等、国際要因では国際紛争・大統領選挙・貿易摩擦・各種経済指標発表等)によって上昇もしくは下落します。
例えば、「日本経済が不況から脱しそうだ」と日本にとって明るいニュースには「ドルは売られ、円が買わる」。そのホットニュースに沿って「ドルを売る」ことで短期的には益金を生み出すことができます。しかし、中長期的に見た場合には、為替レートは以前よりドル高に戻っていたりもします。したがって、マーケット動向に一喜一憂することなく自分自身に適した取引方法で、資産運用されることをお勧めします。
// by R


TOPへ