“The intervention” の現場


2010年9月15日午前10時半過ぎ ・・・
“リーマン危機から2周年” というメモリアルデーに実施された04年3月16日以来の “市場介入!”  前日、菅民主党代表が再選され、「菅首相=円高」 というイメージで、95年4月19日に付けた円の最高値1ドル=79.75円を試すか!? と思われた15年ぶりの円高襲来を一時阻止した政府・日銀の単独介入に、マーケットはそのタイミングにサプラ~イズ!

いったい通貨当局による円売りの “市場介入(intervention)” とは、どんなものなのか?  ドバイショックで円高に傾斜した時にBlogした 『ざ・介入』(11/29/2009UP) をリメイクし、“その時” のインターバンク市場の裏舞台では、どんな騒ぎになっていたか?!  いまではめったに見られない、華やかしころの外為ブローカーハウス(ボイスブローカー)の現場を再現o(^-^)o

この “ドラマ” のシチュエーションは … 日時@1995年4月吉日AM11:30、場所@とある外為ブローカーハウスの「ドル円スポットデスク」@日銀本店周辺。 そして、ドル円のレート(プライス)は 「00-02(ちょうど-マル2)」(*)
……………………………………………………………………
日銀とドル円スポットデスクの間に引かれてるホットラインの電話が鳴り、
『いまいくらですか?』
と無機質な声で日銀のレートチェックが始まった。 円高阻止のための “円売り介入” は近い! と思われてただけに、受話器をとった日銀番も他のブローカーにも身構えた。

日銀番は当然のごとく、レートを右にずらし、
「02-04(マル2-マル4)です」
とプライスコート(プライスを提示)。 このまま何もアクションがなければ、まさに “レートチェックが入った” っていうだけのこと。

・・・ ところが、続いて、
『20銭までに、オファー(offer)は何本ありますか?』(*)
と聞かれたら、いよいよ“伝家の宝刀”が抜かれる瞬間、介入の合図! ブローカーたちの緊張感はピークに!
「152本です」
時間が止まったかのように、ブローカーハウスの室内が静まり返る。

『では、20銭まで買ってください』
待ってましたとばかりに、すかさず日銀番は、
「20銭まで、オールマイ~ン(all mine/全部買った!)」
室内に狂喜とも似た声が発せられる。 そして受話器に向かっては、冷静に、
「152本、ダンです」(Done/約定済み)

ファームプライス(firm price/実勢レート)の 「00-02」 は一瞬にして 「2マル買い」 になったことで、インターバンクの銀行ディーラーたちは、「介入だ」 って悟ることに。 20銭よりも上で売りオーダーをファームにしてたディーラーたちは、即座に 「オ~フ」(off) と注文の取り下げを急ぐ。 “もっと上で売れる!” って欲が出た(*’-^)☆

(*) 「00銭-02銭」=「bid-offer」
(*) 1本=100万ドル
…………………………………

この一瞬のできごとに、あったはずの02銭から20銭までのオファー152本、さらにビハインド(behind)のオファーまでもが消え、まさにファームからドル円のレートが “すべて無くなった!”
ただ唯一、「2マル買いだけ」 というプライスコートがマーケットに響き渡るだけ。

マーケットは騒然となり、「オファーは~?」 と銀行ディーラーたちは叫びまくるも、次に出てきたオファーは40銭で10本。
「マイ~ン」
とすかさず数人の銀行ディーラーたちがヒット(hit)。 ただ、最初に叫び声を発したディーラーの一人勝ち、“よんマル(40)” をゲット! ・・・ そして2番手以降の銀行担当ブローカーたちは、「ゴメンなさい。 入りませんでした」 と謝るばかり。

さて、この時点でも、日銀がマーケットに出ている(介入があった)ことを、本当に知ってるのは02~20銭で売りオーダーをファームに出してた銀行だけ。 スポット取引で、取引相手を公言するのはルール違反!

そしてインターバンク市場では、DD(direct dealing)が活発化。 カバーに入る銀行はなりふり構わず他の銀行のディーリングルームに電話を掛けまくったり、ロイターで呼び出してプライスを取りにおおあらわ。

あれよあれよとオファーが切り上がってく一方で、お昼に出かけてたり、トイレに入ってて、やっと 「介入か!」 と気付いた銀行ディーラーは、ファームプライスにはビッド(bid)ばかりで、大台も様変わりしてるドル円に、ロスカットしたくても、時すでに遅し。

ここでもしも、日銀は売りに転じれば “大儲け!” って面白いんだけど、それじゃ介入の意味ないもんネ。 結局、日銀はあとあと米国債を買う羽目に。

そして、介入もひと段落すると、ブローカーハウス室内の床にはディーリングシートが大量に並べられ、取引の確認作業(マッチング)が始まるとともに、ブローカーたちは昼抜きであったと気づくことに!
……………………………………………………………………

まさに、日銀の “市場介入・為替取引” って、究極の相対取引ですネ! ・・・ ただ、ご存知のように日銀は、財務省から委託されて実弾を伴った 「円売り介入」 するだけ! 表に出る相対の相手先は日銀だけど、本当は “財務相” なんですよネ┐(-_- )┌

・・・ 「介入だ~あ!」 の号砲で、82.87 ⇒ 85.50(東京タイム) へ急落した円だけど、15年たっても歓迎されない “円高” って可哀想!  「強い円は国益」 といえる日がやってきたとき、きっと世界から 「日本は一人前」 ってみられると思うんだけどネ(^_-)☆


TOPへ