Part23


先週末明らかになった 「外国為替証拠金取引業者による顧客が保有するポジションの一方的な強制決済と営業停止」(日経新聞/21日朝刊) の報道。この事案が発生したきっかけは、当該取引業者の “自己売買取引の失敗” (*)だったようですが、問題は 「自己売買口座」 と 「顧客口口座」 の2つ以上の取引口座をヘッジ先金融機関(カウンターパーティ)に設けていたのかどうか? また、当該事案が10月に発生したことも見逃せません。


 
まず、単なる自己売買取引での損失であれば、会社の資産が目減りするだけです。それで事業の継続が困難となれば、顧客には一定期間の内でポジションの清算依頼を通知し、そのうえで、決済後に残る証拠金を顧客に返金すれば、ことは済むわけです。
ところが、取引業者が、顧客との取引をヘッジする目的でカウンターパーティに開設する 「ひとつの取引口座」 で “自己売買とヘッジ取引” を行っていると、ことは厄介です。 通常、取引会社が自己売買取引も行う場合、カウンターパーティとの間で 「顧客口口座」 とは異なる “別口” の取引口座で取引を行います。 自己売買取引は、会社の資金を自ら運用するものですから、当然自己資金をカウンターパーティに預託した上で、外国為替証拠金取引を行うことになります。ここで取引を失敗したとしても、会社の資産が目減りするだけで、顧客資産に何らダメージを与えることは起こりえません。
しかし、万が一、「ひとつの取引口座」で “自己売買取引も顧客取引のヘッジ取引” も行っている場合には、たとえ顧客が取引で利益を積み上げていても、それ以上の損失が取引業者の行う自己売買取引で発生したら、当該口座の証拠金残高は減少し、カウンターパーティによって強制決済が行われることもありえます。
さらに、今回の事案が10月半ばに発生したことにも注目です。取引会社が当局へ提出する “四半期の取扱実績報告書” の期限にも関係があったのでは? 報告書に記述すべき内容には、顧客の取引状況や証拠金残高を記載する項目に加え、自己売買取引に関する記載項目も含まれます。仮に “月次報告” であったならば、当局も見過ごさなかったのでは?
取引業者がカウンターパーティに開設する取引口座は、レバレッジを効かせた外貨取引するためのものですから、顧客から預かる証拠金100%をカウンターパーティに預託することはありません。顧客の依頼による出金をスムーズに行うため、国内の市中銀行に残しておくことも必要になります。


ここまで述べてきたことは、法令で 「登録要件」 にも謳われる “純財産額は5000万円以上” を満たしてることを前提にしたものであることは、言うまでもありません。何らかの理由(取引システムのトラブルなど)で取引業者が損失を発生させても “純財産額” 内であれば、顧客資産は守られる可能性が高いことにつながります。自己売買取引を行っている取引業者は多くはないと思いますが、外国為替証拠金取引では 「信用リスク」 として、もしも、取引業者に純財産額を上回る損失が発生した場合には、”信託された証拠金”(*) 以外は戻らない可能性もあることを、投資家は前もって理解しておくことが大切です!
(*) その後の報道で、当該業者はサブプライム問題の影響で急激な円高が進んだ際に、顧客の注文をヘッジしそこねた ・・・ さらに、証拠金やその他を会社の固有財産と区分してなかったことで、顧客の証拠金が目減りしたことにつながったというものでした。
(*) 信託保全といえども、顧客一人ひとりの名義で預託証拠金が全額・即時信託されているとは限らないことも、理解しておくべきですネ。
// by Rumina
2007年10月22日


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