誤解まねく会話のリスク?


インターバンク市場では、80%近くのSPOT取引が電子ブローキングシステムを介して取引され、また外国為替証拠金取引においてもインターネット取引が 主となりつつあります。しかし、電話取引に頼った取引も続いています。電話取引では、早口でしゃべったり、大きな声のために声が割れて聞こえづらかった り、また携帯電話だと電波障害による通信状態にも左右されるために、意思疎通が困難な環境に出くわすこともあります。

■そこで、どんなことに注意して電話取引することが必要なのか?
取引会社は、顧客から注文(オーダー/order)を受ける際には、その都度、「取引口座の種類」「買い/売り」「通貨」「ロット数」「レート」「オー ダーの有効期間」を確認し、再度注文入力もしくは執行後に復唱することを心掛けています。また顧客も、取引内容の復唱を求める重要性を十分に認識すること が大切になります。

さらに、電話による注文の際には、電話口で誤解されやすい次のような言葉があります:

「いいよ」
・・・「売り/買い」(成行き注文)の執行をやっていいのか?やらないでいいのか?ハッキリしない。
「売って」「買って」
・・・早口で言われると正確に聞き取れず、紛らわしい。
「売ったのどこ」「買ったのどこ」
・・・話題のなかで、売り筋や買い筋のことを指しているのか?売買注文の約定のレートを指すのか?紛らわしい。
「売るよ」「買うよ」「売ろう」「買おう」
・・・プライスを提示した際に、売っていいのか?買っていいのか?紛らわしい。
「付いてる」
・・・高値/安値のレンジ幅で特定のレートで取引があったか?注文が約定されたのか?注文が未執行のまま残されているのか?紛らわしい。
「ほっといて」
・・・「そのままで」「オフしておいて(取り消して)」「売って」と、紛らわしい。
「わかった」
・・・「買った」と聞こえる。

また、少しまえまで十数行の都市銀行が存在していたころ、インターバンク市場で第一勧業銀行(現みずほ銀行)は通称「だいいち」と呼ばれ、ドイツ銀行は 「ドイチェ」と呼ばれていたために、ボイスブローカーが取引先ディーラーに取引の相手先金融機関名を伝達する際に、両行を混同して間違って伝えられること もありました(チョッと声を出して言い比べてみてください)。

以上の注意点を参考に、顧客は取引会社と十分に意思の疎通を取りながら注文を出すように心掛けることをお勧めします。電話取引は、顧客にとって取引リスクの前に『会話リスク』が伴うのです。

電話取引では、紛らわしい言葉による注文、保有ポジションやマーケット動向による感情移入が言質やトーンに表れるために、肝心な注文内容がうまく伝わらず に時間を要したりもします。インターネット取引でも、システムの特性を悪用して取引ルールに反した不当な注文をしようとする顧客がいます。取引会社の管理 者は、電話取引やシステム取引における対顧客とのトラブル内容や特定顧客との発生頻度などをチェックして、顧客管理をすると共に、トラブルの再発防止に努 めています。

 


電話取引をする顧客の共通点は、初心者、もしくは時間をもてあましている人、寂しがりの人、話し好きな人、決断を求めている人、為替差損を出したときのはけ口を求めている人、そして深夜に電話してくる人が多いようです。

さて、「ではいったい、インターネット取引では、どのような 『取引リスク』 が考えられますか?」
休憩を挟んで、≪為替の謎-3≫を解いてみましょう!


システム取引のリスク


≪為替の謎-3≫では、為替取引の “リスク” を題材にした講義でした。そして、そのときの謎は「インターネット取引では、どんな取引リスクがあるの?」でした。では、ご一緒にそのナゾを解いていきましょう!


ブロードバンドの普及によるインターネット取引は、eコマースでの音楽・映像のダウンロード、商品の購入やオークション取引をはじめとし、インターネット上で “ショッピング” を楽しみ、eペイメントによる決済取引行為は以前と比べ、飛躍的に認知度が高まっています。

また、ネット証券会社による株式の取引シェアー拡大も、手数料の値下げや取引システムの開発によって、個人客までもがリアルタイムによる情報の入手とプロ 仕様の取引システム環境によって、身近なものと感じられるようにもなってきました。そして数年前からは、新たにレバレッジを効かせた外国為替取引もスペ キュレイティブな取引として注目され始めています。一部の詐欺まがいの業者による為替取引の勧誘によって、あまり好ましくないイメージが先行して注目が当 てられている節もありますが、外国為替取引自体は新しいものではなく、また個人でも慣れ親しみのある金融商品です。

1ドルが360円の単一通貨政策によっていた頃から、海外旅行に出かける際には、数十万円を銀行窓口で外貨であるドル札やポンド札に何枚も両替して、そして今でも外国のお札を手にした瞬間、もの珍しいその新鮮な色使いに 「オモチャみたい!」と心が弾むものです 。

為替動向には、いくつかの節目があり、1971年8月のニクソンショック、1978年10月のカーターショック、そして私個人的にも忘れられない1985 年9月プラザ・ホテル(NYC)で開催されたG5(先進5か国財務相・中央銀行総裁会議)によるドル高修正のために行われた協調介入です。

プラザ合意の前までの1ドル約240円から、1987年初頭までには約120円までドルが急落し、当時留学していた私は、まさに 『ドル安/円高の恩恵』 を受けた一人でした(学費・生活費を外貨送金していた親が助かった!とも言えます)。また、フランスやイタリアの有名バックや貴金属、ガソリンや灯油の購 入には、『円高メリット』 のアリガタ味を実感する人も多いと思います。逆に輸出を主な業務とする事業者の方には、円高は為替決済をする際に 「円キャッシュの目減り」で頭の痛いところです。為替取引は経済活動の上でも重要な役割を果たしているのです。

昔からある金融商品 “外国為替取引” は、レバレッジを効かせ証拠金を預託して取引する “外国為替証拠金取引” として、インターネット取引できるようになり、個人でも 「秒単位で取引する銀行の為替ディーラー」のように、為替差益を獲得できるようになりました。もちろん外国為替証拠金取引に係わる取引リスクは十分に理解 した上で取引参加することは言うまでもありませんが、その他にも 『インターネット取引リスク』を十分に理解しておくことが大切です。

取引システムの操作方法が不慣れなために、注文の執行に手間取ったり、「買い」と「売り」の執行を間違ってしまったり、決済の注文をしようとして実は新規 の取引をしてしまったりもありがちです。また、取引システムは取引会社ごとに仕様が違うために、数社を使い分けて取引されている場合などでは、とっさの時 に間違った執行をすることもあります。したがって、必ず取引される会社の取引システムを 『デモ取引』 で体験し確認しておくことが大切になります。

また、ブロードバンドでスムーズな取引環境が整いつつあるとはいえ、通信回線の不具合により接続不能になってしまったり、PCのフリーズによって、売買 チャンスを逃してしまったりすることもあります。プロバイダーの環境にも影響されます。アクセスが多い時間帯では、通信速度が落ちたり、思わぬ時間帯のメ ンテナンスで取引ができない状況に出くわすこともあります。そのためにも、保有するポジションや指値注文を常に把握しておくことが、いざというときのため にも必要です。

そして重要なことですが、取引システムへログインするためのユーザーIDやパスワードなどの管理です。決して第三者へ知られることのないように、また忘れ ることのないように覚えておくことが大切です。また、自分のPC以外でのインターネット取引では、第三者によるなりすましの利用も考えられ、パスワードの 変更などによる対策や、また自らもインターネット取引でシステムの特性を悪用した 『取引ルール』 に反するイレギュラーな注文をしないように心がけることが大切です。


みなさんのお考えは、いかがでしたでしょうか!?


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