ヘッジで誰かが損する?


為替取引は、相対取引であることはよく知られています。インターバンク市場でも金融機関は、仲介業社(ボイスブローカー)や電子グローキングによる間接取引、また金融機関同士による直接取引によって為替取引(スポット取引やフォワード取引)をしています。

金融機関は、スポット取引で直接取引をする場合、A銀行がB銀行に取引を申し込む時では、次のようなやり取りをします:

A銀行: 「A銀行のYですが、スポット円(ドル円)で20本プライス(2000万ドルのプライス)をお願いします」
B銀行: 「50-55です」
A銀行: 「20(twenty)Mine。お願いします」
B銀行: 「Done。B銀行は109円55銭で2000万ドル売りました。Zが承りました」
A銀行: 「A銀行は、109円55銭で2000万ドル買いました。ありがとうございました」

以上の為替取引により、バリューデイト(Value Date)といわれる2営業日後には、B銀行は2000万ドルのキャッシュをA銀行に振込むことになります。また、A銀行はB銀行へ21億9100万円を振込むことで取引の受渡し(決済)は終了します。

B銀行は109.55で20本ドルを売ったことによって、万が一ドル円のマーケットがドル高トレンドに向かった場合には損失を被ることになります。その場合の為替リスクに備えるために、B銀行はインターバンク市場でヘッジ(取引のカバー)をします。

為替ブローカー数社の内、「50-53」とクォート(Quote/プライス提示)していれば、そのブローカーに「20本Mine」と53をヒット(53で 2000万ドル買いたいと意思表示)します。そのブローカーで20本が揃わなければ、B銀行は他のブローカーハウスのプライスをヒットするか、もしくはポ ジションを保有しマーケット動向を静観します。

B銀行は全てのアマウント(金額)を109.55以下でヘッジができたのならば、差額分が為替差益(ディーリング益)となります。また、インターバンク市 場でB銀行にヒットされた(ドル円を売った)銀行は、インターバンク市場において直接もしくは間接取引によってヘッジを行います。

外国為替証拠金取引では、取引会社は、顧客がヒットした取引をカウンターパーティ先の金融機関にヘッジすることで、為替リスク並びに取引リスクは発生しません。


さて、ここでナゾが浮かび上がってきました!
「ではいったい、為替ヘッジすることで誰も損する人はいない?それとも、誰かが損をするのでしょうか?」

続いて、そのナゾを≪為替の謎-2≫で解いてみましょう!


ヘッジの謎解き


≪為替の謎-1≫では、為替取引のヘッジを題材にした講義でした。そして、そのときの謎は「為替ヘッジで結局は誰かが損するの?」でした。では、一緒にそのナゾを解いていきましょう。


スペキュレイティブ(投機的)な取引と実需によって、為替は取引されています。

ヘッジファンドや金融機関のディーラーが仕掛ける、地政学的要因や経済指標、当局高官の発言、株価や金利など他の金融商品の動向によって敏感に反応し、為替動向を促す為替差益を狙った取引は、スペキュレイティブな取引といわれます。

それに対して、自動車メーカーや電気・ガス・石油会社は、輸出入に係わる代金決済で、ドル建て代金を円貨で受け取ったり、また円をドルにして支払ったりと、実際の経済活動の一環として為替取引をするものです。

シュミレーションで検証してみましょう。
第一回の講義で、A銀行が20本プライスを求めていた理由には、ドル建て投資信託の設定のために証券会社から問合せがあり、A銀行はその証券会社に 109.53-56と提示し、56で20本買われた(A銀行は証券会社へ109.56で20本売った)ために、56以下で20本をインターバンク市場で買 い戻そうとしたものと考えられます。

B銀行は109.55で20本をA銀行へ売りましたが、55以下で20本揃えることができずに5本買い戻せなかった場合には、55より高いレート 109.57で例えば10本買い、余分に買った5本を109.60で売れば、為替差益を獲得することになります。B銀行がヘッジした相手先金融機関も、B 銀行が行った取引で取引リスクの軽減を図ります。

そうすると、『為替取引で誰も損する人はいない?それとも、誰かが為替取引によって損をする?』のナゾの解明は?!
この一連の取引後に取引をする輸入における決済をする企業であり、その商品を購入する消費者が為替差損を被ることになります。

本来109.50-55のレベルで、輸入業社はドルを調達して海外からの物品を輸入販売できたいたものが、ドル高に向かうことで調達資金が膨らみ、その転 嫁により消費者は以前より高い値で買うことになると想定されます。また、反対に為替マーケットがドル安局面に向かう際には、自動車メーカーや電機などの輸 出業社は、ドルベースでの決済時には円価の目減りで、業績に影響を与えます。

しかしその反面、ドル高局面では輸出業社は利益が膨らみ、ドル安局面では輸入品が安くなったり、海外旅行をする際に恩恵を受けます。

したがって、「金融機関や企業が為替ヘッジをすることで、最終的には消費者がその損を被ったり、恩恵を受ける」ということになります。


みなさんのお考えは、いかがでしたでしょうか!?


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